簡単に言うと、もうじき会

簡単に言うと、もうじき会津と官軍が大規模な戦争をする。

そこには佐川もいる。

それに助太刀に行ってほしいらしい。

 

会津と官軍が戦争をするきっかけになったのは、会津が謝罪を拒否したことと、新政府軍の鎮撫使を仙台藩士が殺害したことにあるらしい。

 

 

今回は会津と奥羽越列藩同盟、計14藩対、官軍の全面戦争だ。

 

だが土方は旧幕府軍と宇都宮を落とそうとしている。

そこで斉藤に頼んだわけだ。

 

それに、東北までいくと、江戸に戻るにはたくさんの時間が掛かる。

「連れていく隊士は…」

 

斉藤は間を置いた。

考え込んでいるらしい。

 

そこでふと思った。

 

 

──私と沖田さん…離れるかもしれない。【脫髮先兆】頭髮變幼變薄?留意四大脫髮成因!

 

 

これは仕方のないことだ。

遊びではない。

 

 

ただ、遊びじゃないからこそ、沖田とは離れたくなかった。

 

 

お互いいつ会えなくなるかわからない──。

 

 

そんな不安に駈られた美海は、ふと沖田を見た。

彼も同じことを思ったのか、美海は沖田と目が合った。

 

わがままなのはわかってる。

斉藤さんとまた離れるのも嫌だ。

けど、沖田さんとはもっと離れたくない。

 

 

素直な気持ちだった。

 

 

「連れていく隊士は、美海と、総司と、鉄………以外」

 

土方は目を見開いた。

 

 

私と沖田さん、離れないんだ…。

だが、複雑な気持ちになった。

 

 

斉藤さんは…?

 

「お前…じゃあ誰を連れていくんだ?」

 

「そうですよ!」

 

思わず沖田も声を挙げる。

 

「お前ら以外の隊士13人連れていく」

 

斉藤は迷わずそう言った。

 

「誰かもう一人ぐらい隊長レベルの刺客が必要じゃねぇか?」

 

土方の言葉に異国語が入っていたため、斉藤は一瞬悩んだ。

 

「あなたを守るのにそれは必要です。あなただけはいなくなっちゃならない」

 

「じゃあ斉藤くんは…」「俺の代わりはいくらでもいる。が、あんたは違う。

あなたがいなくなったら終わりだ。土方さん」

 

 

斉藤は自己犠牲的な所がある。

 

それは土方も同様なのだが。

 

「わかった…。だが斉藤くん。言うが、お前の代わりなど誰一人いないからな!

また会津で合流する。俺が帰るまで、絶対に死ぬな」

 

「あぁ…」

 

斉藤は頷いた。

 

こうして私達は今度は宇都宮に、斉藤さんは会津に行くこととなった。

 

 

また会津で落ち合う約束をした土方と斉藤は意外にもすんなりと別れ、現在は宇都宮に向かう途中。

 

彼らは近くの宿屋に身を置いていた。

 

 

「ふぅ~…」

 

美海は大きく息を吐いた。

疲労が、大分溜まっている。

 

 

沖田は手を後ろに着けて天井を見上げている。

ずっと、ただぼんやりと。

 

何か見えるのかと美海も同じようにしてみたが、特に何が見えるわけでもなく、ただすす汚れた天井の梁が見えるだけだった。

 

 

今回は人が少なくなったこともあり、美海は沖田と同室だった。

 

 

「私ね」

 

「はい?」

 

沖田が天井を見上げたまま声を上げたため、美海はチラリと沖田の顔を見る。

なんとなく微笑んでいる気がした。

 

 

「おかしいんですけど、夢があったんです。

昔は自分が未だに『普通』に生きれるとは思ってもみなかったから。本当におかしな、小さな夢なんですけどね」

 

 

「なんですか?聞かせてくださいよ」

 

こんな話、沖田から初めて聞いた。

 

 

──私には、夢があっただろうか?

 

 

「笑いませんか?」

 

「笑いませんよ」

 

 

そういいながらも美海と沖田は二人で笑った。

 

 

……?

笑い声…?

 

 

美海達の部屋の襖を通り掛かった土方は久しぶりの笑い声に足を止めた。

 

 

「総…」

 

声を掛けようとしたが、沖田の話し声が聞こえ、なんとなくそこで立ち聞きする状態になってしまった。

 

 

 

「もちろんね、一番は近藤さんや、土方さんとずっと一緒にいることだったんですけど」

 

 

「えぇ」

 

それは今に始まったことではない。そんなの皆が知っている。

 

 

「…私はね、所帯を持って、愛する人に『いってらっしゃい』、『おかえり』って笑って言ってもらうことが、夢だったんです」

 

それは土方にとっては困る。

Get Started

ドカドカドカドカッ!

ドカドカドカドカッ!

 

 

皆が悲しみに明け暮れている中、沖田は既に馬を走らせていた。

 

かなりのスピードで砂ぼこりが舞う。

 

 

 

この時は無心だろう。

 

ドカドカドカッ

 

 

 

沖田は素早く流れる景色に目を見張る。

 

 

ちがう。【脫髮先兆】頭髮變幼變薄?留意四大脫髮成因!

 

 

 

 

ちがう。

 

 

あれじゃない。

 

 

 

土方の言った通り、道はいつもより大分混んでいた。そのため探すのが困難だ。

 

「ケホッ」

 

 

 

かなり走ったが山南らしき人は見つからない。もっとも、見つかってほしくないのだが。

 

 

まずい…。日も沈みかけてる。

 

急がなきゃ。

 

 

 

気付けば沖田は大津まで来ていた。

 

 

まずいなぁ…。

 

 

 

沖田の目の前には沢山の宿場が広がっていた。

 

 

 

しらみ潰しに調べるか?いや。日が暮れる。

 

第一ここじゃなかったら?とんだ無駄足じゃないか。

 

 

まずいな。

 

 

沖田の頭の中には沢山の思案が流れる。

 

 

 

どうこう立ち止まっていると自分を呼ぶ声に気付いた。

 

 

「沖田くん」

山南さんの声…?

 

 

沖田はキョロキョロと辺りを見渡す。

 

 

「沖田くん。こっちこっち!」

 

 

今度ははっきり聞こえた。

 

 

山南さんだ。

 

 

 

その声の先を見ると、茶屋から湯気だった湯飲みを持った山南が顔を覗かせていた。手招きしている。

 

 

沖田は山南に駆け寄った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ。一緒に帰りましょう」

 

沖田は山南に招かれ、敷居に座って団子を食べている。

 

 

「もう私に帰るとこなどないよ」

 

 

「何言ってるんですか。屯所があるでしょ。皆心配してますよ。さぁ」

 

沖田は山南の手を引いた。

 

だが山南は動かない。

 

 

 

 

「私は脱走したんだよ」

 

その言葉に沖田の顔はひきつる。

 

 

「その意味は君もわかるだろう?」

 

 

局中法度により………切腹。

 

隊内で決められた絶対の掟。破ることなどできない。

 

 

「違う…違う!山南さんは脱走なんてしてない!」

 

沖田は今までにないぐらいに取り乱している。

 

 

それを山南は優しい目で見ている。

 

 

「脱走なんかじゃ…ない…なにか理由をつけて…!!なにか…!嘘でいいから…」

 

 

「沖田くん。もういいよ。まさか君が来るとは思わなかった」

 

 

 

「なんで…。嫌だ……嫌だ」

 

 

 

「………逃げてください」

 

山南は目を見開いた。この目の前の少年は何を言っているのだろう。

「沖田くん?」

 

 

「私が見なかったことにします。そうですよ。逃げてください!」

 

 

「沖田くん」

 

 

「大丈夫!上手くやるから!」

 

 

「沖田くん!」

 

 

ビクッ

 

 

「初めから覚悟はできてるんだ。武士らしく切腹できるなんて本望じゃないか。だからもう止めてくれ…。君の誠を汚さないでくれ」

 

 

 

「なんで……うっ…なんで…ふっ…ぅぁぁ…!」

 

沖田は嗚咽を洩らす。

涙が止めどなく溢れる。

 

 

「今は泣いていいけど、切腹の時はそんな顔で送り出さないでくれよ」

 

 

山南は沖田を抱きしめながらポンポンと背中を叩いた。

山南の着物は沖田の涙で淡く、染みが出来た。

 

 

あぁ。なんでこの人は私に見つかってしまったんだろう。

もっと遠くに逃げてくれれば。

あの時声なんか掛けなければ。

 

 

どんな形でも生きてくれればよかったのに。

 

 

「ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから山南と沖田は大津の宿場で一泊して帰ることにした。

 

沖田もさっきよりは落ち着いたようだ。

 

 

「なんで…脱走なんか」

 

 

「居づらかったんだ。それにどうもやっぱり納得がいかなくってね。私がやってることは間違ってるように思えた。ただそれだけだよ」

 

「皆山南さんが好きです。皆山南さんを必要としていまっゴホッゲホッ!」

 

 

「沖田くん!?大丈夫か!?」

 

突然咳き込んだ沖田を山南が支える。

「ゲホッ!ケホッ…はぁ…はぁ…大丈夫です…。ありがとうございます」

 

 

山南に背中を擦ってもらい、沖田は息を荒くしながらも咳が止まった。

 

 

「どうしたんだ…?」

 

 

「寒空の下結構な速度で馬を走らせたからじゃないですか?大丈夫です。流行り風邪ですよ」

 

 

「そうかい?」

 

 

「はい。でもどうして江戸になんか」

 

 

「もうその話は止めだ」

山南は微笑んだ。

 

 

 

「…そうですね」

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えた。

えた。

 

 “ 決して泣くものか ” と、濃姫はかぶりを振る。

 

 

笑顔でいよう、最後まで。

 

信長が好きだと言ってくれた、笑顔のままで──。

 

 

濃姫は涙の溜まった目元をうと

 

「私は…もう泣きませぬ、上様。…私は織田信長の妻です��の。うつけにした女に、涙など似合いませぬ故」

 

そう言って、らかに微笑んだ。

 

「私は、うつけの妻となった事を今に至るまでいた事はございませぬ。あなた様と出会っていなければ、【脫髮先兆】頭髮變幼變薄?留意四大脫髮成因!

 

信忠殿という頼もしい息子のにも、胡蝶の母になる事も叶いませなんだ。 …ほんに私は恵まれて──」

 

すると、ふいに喉の奥がつかえ、濃姫は激しく咳き込んだ。

 

周囲は先程よりも濃い黒煙に包まれており、くと目が痛いほどである。

 

鼻腔に入るのは煙ばかりで、口の中は異様なほどに苦み走った味がしていた。

 

すぐ隣で燃え盛る炎の熱によって、既に濃姫の肉体そのものも、異常をきたし始めていた。

 

それでも濃姫は一言として『 熱い 』とも『 苦しい 』とも言わなかった。

 

それは、りに弱音を口にしてはならないという貴人としての心得であり、

 

また多大な苦しみに耐え抜いたを称え、見習おうとする、妻としての姿勢でもあった。

 

やがて、熱さと呼吸困難によって、意識がとなった濃姫は、

 

信長を抱き締めたまま、バタリッと音を立てて床の上に倒れ込んだ。

浅い呼吸を繰り返しながら、濃姫が薄目を開くと、愛しい夫の顔がすぐに目の前にあった。

 

安らかな信長の面差しを見て、濃姫は本当に嬉しそうに微笑むと

 

「……うえ…さま…」

 

今一度 彼の頬に触れ、優しい手つきででた。

 

こうしていると、の上で信長の寝顔を眺めているようだ。

 

濃姫は最後の力を振り絞り、自分の身を隙間なく夫の身体に寄せた。

 

 

『 …上様、何やら不思議にございます…。お濃はこれまでの、どんな時よりも、あなた様を近くに感じておりまする 』

 

 

危機的な状況にも関わらず、濃姫の心の中は不思議と幸福感にれていた。

 

死にゆくのではなく、愛する夫と新たな世界へ旅立っていくような、希望に満ちた思いがあった。

 

だんだんと意識が遠退いてゆく濃姫の脳裏に、ふと、過去の目まぐるしい日々がってくる…。

 

 

信長の真意を探る為に、町民の扮装をして尾張の街や野を駆け回ったこともあった。

 

信長と信勝の世継ぎ問題や、父・道三と義兄・義龍の対立に心を痛めたことも。

 

類()への信長の寵愛に思い悩んだことや、龍興のをり出す為に、

 

おら側室たちと一丸となって動いたことも、今となっては良い思い出である。

 

最初の御子を流産したことや、美濃の父母・兄弟たちをうという悲しい出来事もあったが、

 

胡蝶の出産と彼女の健やかな成長、信長の安土城落成など、笑みを誘う出来事も多かった。

 

やはり自分は恵まれていたのだと、思い返して、濃姫は己の幸福な人生に改めて感謝した。

 

それを与えてくれた、信長を始めとする多くの人々にも。

そう思った、泣かないと決めていたはずの濃姫の目から一筋の涙がこぼれ落ちた。

 

それは、先程までの涙とは違い、悲しみや絶望を含むことのない、実に暖かいものであった。

 

濃姫はそのんだ瞳を、信長の端麗な面差しに向けると

 

「………ずっと……、一緒にございますからね……。…ずっと……」

 

まるで眠りに付くかのように、ゆっくりと双眼を伏せていった。

 

春の

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濃姫は、やおら唖

濃姫は、やおら唖然とした表情で権高な笑みを浮かべる姑の面差しを眺めた。

 

まだそんな事を考えていたのかと飽きれる反面、どうにかして信勝を当主の座に押し上げようと目論むその執念に、不思議と胸を衝かれるものがあった。

そんな会話があってから数分と経たぬ内に、濃姫は姑の御座所を辞した。

 

「大方様の御薬湯の時間です故、そろそろ」

 

と報春院付きの侍女に促されたのを機にしての、早過ぎる退出であったが、実際は、【脫髮先兆】頭髮變幼變薄?留意四大脫髮成因!

 

部屋の入側で待機していた三保野が、室内の不穏な空気を察して

 

「付きの御方々、そろそろ大方様のお薬の時間であろう? 早ようご用意して差し上げなされ」

 

「いえ、大方様のお薬にはまだ一時ございまする」

 

「そんなはずはない。もうお時間じゃ」

 

「左様な事はございませぬ、ほんに後一時…」

 

「お薬、の、お時間、じゃ。──そうであろう? のう?」

 

人をも殺し兼ねない血走った眼を侍女らに向け、退出の機会を作ったのである。

 

それ故か、濃姫が報春院の部屋を出てから二十歩も進まぬ内に

 

「何なのでございましょう、大方様のあの仰り様は!? いくら殿の母君とはいえ、閨房(けいぼう)のことにまで口を挟まれるとは!」

 

三保野はいつものように、主人に代わって鬱憤を漏らした。

 

「よさぬか三保野。義母上様に聞こえまする」

 

「聞こえても良いではありませぬか。閨の事だけならともかく、吾子の事までも……。嗚呼、とても貴人の奥方のお言葉とは思えませぬっ」

 

「やめよと言うておる。その話はもうしとうない」

 

「されど──」

 

「少なくとも義母上様は、妻としてご夫君を支え、奥を守り、そして御子を幾人もお産みなされた。

 

武家の奥方が成すべき役目をしかと果たされているのです。そんなお方に、私ごとき不甲斐者が何を申せようか?」

 

「姫様…、左様な自嘲はおやめ下さいませ」

 

「自嘲ではない。事実じゃ」

 

濃姫はうけ流すように言うと、小袖の上に纏った紗の羽織を軽やかに翻し、

 

先ほど通った長い長い廊下を、またすたすたと歩き始めた。

 

姑の言葉が尾を引いているのか、姫の顔色は終始冴えない。

 

何か良い慰めの言葉はないものかと、三保野が頭を悩ませていると

 

「──ま、姫様。あれを」

 

ちょうど奥と表の境にある渡り廊下に人影を見つけ、思わずそちらに手を伸ばした。

 

濃姫も徐に足を止め、三保野の手の先に視線をやった。

「まぁ、信勝殿──」

 

影の主が己の義弟であることに気付いた濃姫は、思わずはっとなり、眩(まぶ)しげに両眼を瞬いた。

 

信勝は姫の存在には気付いていない様子で、渡り廊下の欄干の前に立ち、ぼんやりと夏の空を見上げている。

 

その面差しは何とも鬱々しげで、覇気というものがまるで感じられない。

 

どうしたのかと思い、濃姫はそのままするすると渡り廊下の方へ足を進め

 

「信勝殿。如何なされたのです?このような所で」

 

笑顔を作りながら、そっと声をかけた。

 

その瞬間、空を見つめていた信勝の双眼が軽く広がり、その首が機械的に姫の方へ向いた。

 

「……濃姫様」

 

力なく呟く信勝の瞳に、暗々とした翳りが、拭っても消えない染みのように貼り付いている。

 

何とも言えない不安を覚えた濃姫は、眉をひそめつつ、暫らくその場に立ち尽くしていた。

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きっと打ちひしがれて

きっと打ちひしがれて、立ち直る事も出来ますまい。……真実など、知らぬ方が良いのやも知れませぬ」

 

そう悄々として呟くと、指先に細い棘が刺さっているような焦れったさを感じ、濃姫は小さな溜息を二、三度漏らした。

 

途端に、報春院の鋭利な眼差しが姫の憂い顔を貫く。

 

「お濃殿」

 

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「何の話をしているのか、わらわにはまるで分かりませぬ」

 

姫の清廉な面差しに思わず苦笑が浮かんだ。

 

「ご無礼を致しました、つい私的な事を──。とにもかくにも、母もその侍女たちも大事なく過ごしておりまする。

 

私の名をもって、殿が秘かに寺へ多く施しをして下さっております故、日々の生活にも事欠くことはないという次第でして」

 

報春院はふーんといった感じに鼻を鳴らすと

 

「実の母には冷淡な信長殿も、義理のお母上にはお優しいのじゃな」

 

不満の募る表情で呟いた。

 

「何も左様なことは。殿はあくまでも、独りになってしまった母上を哀れんで……」

 

「それはどうであろう。私もそなたの母上と同じく夫を亡くした身の上じゃが、信長殿からは慰めの言葉一つかけてもらった事がない」

 

「恐れながら、義母上様と我が母では、置かれている状況が��いまする。

 

それに、義母上様のお側には信勝殿が付いておられます。自らがお慰め申さずとも、

 

信勝殿が常に義母上様をお支えしておられる故、殿も心丈夫なのでございましょう」

 

取り成すように姫が述べると、報春院はその瞳の上に、うっすらと慈愛の色を浮かべた。

 

「…ええ、その通りじゃ。…信勝。あの子がいてくれるからこそ、わらわらの日々の平穏と安らぎがあるのです。

 

もしもこれが信長殿ならば、安らぎどころか、苦悩と苛立ちの日々を過ごす羽目になっていたであろう」

 

一転して、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる報春院は、言い終わるなりハッと何かを思い出した様子で

 

「時にお濃殿。信長殿とのお仲は、如何(いかが)なのじゃ?」

 

やんわりと姫に訊ねた。

「仲と申されますと?」

 

「無論 夫婦仲のことに決まっておろう。──夜の営み事は、しかと致しておられるのか?」

 

急に閨(ねや)のことを問われ、濃姫の目に、驚きと戸惑いの色が駆け抜けた。

 

「それは………、はい…。人並みには」

 

「人並みか。ならば、床が冷え切っているという訳ではないのじゃな?」

 

姫は軽く頷いた。

 

「ならば、何故未だに吾子(わこ)が授からぬのです? そなたが美濃から尾張へ輿入れてより、

 

既に七年が経とうというのに、懐妊の兆(きざ)しがまるで見えぬとは──。何か特別な訳でもあるのですか?」

 

「いえ…特には」

 

「ならば互いの身体の相性が悪いのか、または、吾子を身籠り難い御身なのか」

 

報春院のねっちりとした視線が、黒繻子の帯が巻かれた姫の腹部に当てられる。

 

俄(にわか)に耐え難い思いが湧き上がり、濃姫は姑の視線を遮断するかのように、目の前の畳の上にサッと三つ指をついた。

 

「それにつきましては、まことに面目次第もございませぬ。…励んではおりまするが、流石に、こればかりは……」

 

整った細眉が、姫の苦悩を物語るように歪んだ。

 

すると報春院はふっと薄ら笑いを浮かべて

 

「何、わらわは何もそなたを責める為に吾子の話を持ち出した訳ではないわ」

 

「─?」

 

「懐妊の兆しがないのであれば、それはそれで好都合というもの。信長殿に織田家の世継ぎの望めぬとあらば、

 

尚更一門、重臣たちの信勝への期待と関心は高まり、信長殿御廃嫡の筋書きもより現実味を帯びたものになろうぞ」

 

「…義母上様…」

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「惚れ直すなどとんでもござ

「惚れ直すなどとんでもございませぬ。濃は常に、殿に惚れております故」

 

「はははっ、にくい事を申しおる」

 

久しぶりに聞く信長の笑い声に、濃姫は溜飲の下がる思いがした。

 

「それに致しましても、此度の政秀殿の美談。家中からではなく、あえて民百姓の口から流させるとは、お考えになられましたな。

 

内々に流した噂など、一瞬で消えてなくなる水泡のようなもの。

 

それに、かような噂が家中で立てば、新たな争いの火種となる可能性もございます故」

 

濃姫の話を伺いながら、信長は再び弓を構えた。【植髮分享】如何提高植髮成功率? -

 

「それもある。…が、そもそも噂というものは民から立つのが常。

誰ともなく流された話ならば、咎められる者も出ぬ故な」

 

「まぁ」

 

「それに民間から流れた噂は根強き故、なかなか人の心から離れぬものじゃ」

 

「つまりこの先、美談と���わせ、誰も平手殿をお忘れになられぬ──そういう事でございますね?」

 

信長は濃姫をチラと見てほくそ笑んだ。

「これで爺の怨み辛みも、少しは晴れてくれると良いがのう」

 

「きっと許して下されておりまする。殿がここまでお心を尽くされたのですから」

 

「何、そちの助言に従ったまでの事よ」

 

「助言?」

 

「前に言うておったであろう? 後は儂が、爺の心にどう答えるかだと」

 

濃姫は「あ…」と、吐息のような声を漏らした。

 

それと同時に、信長の弦を引く手が離され、パン!と気持ちの良い音を立てて矢が的に当たった。

 

「お濃!」

 

「…?」

 

「そなた先程、爺は儂を許してくれていると申したな?」

 

「は、はい」

 

「どうやら、そなたの言う通りらしいぞ」

 

濃姫が小首を傾げながら、信長の視線の先に目をやると、矢が寸分の狂いもなく、

 

的の中心にぴーんと、見事に命中していたのである。

 

「不調が直りおったわ」

 

信長は甲高く、快活な笑い声を響かせた。

 

 

雲一つない、冬の青々とした空に響き渡る信長の声。

 

それを天上から、政秀が微笑(わら)いながら聴いている…。

 

濃姫はそんな気がしてならなかった。

 

平手政秀の突然の自刃により、何かと騒がしかった織田家中も、桜の蕾が膨らむ頃には、すっかりいつも通りの日々を取り戻していた。

 

信長の思惑通り、人々は主君を諌める為に死したと噂される政秀を、情厚き忠臣として讃えたが、

 

肝心の信長自身は今までと何一つ変わらなかった。

 

服装も髪型も改めず、うつけな振る舞いもそのまま。

 

事情を知らぬ者たちは

 

「傅役殿は無駄死にであったか…」

 

と思わず肩を落としたものだった。

 

 

しかし、政秀の死の影響は織田家のみに留まらなかった。

 

 

 

その年の四月中旬──。

 

濃姫の生家たる美濃・斎藤家の居城 稲葉山城では、此度の一件に危機を感じた家臣たちが、

 

広間の上段に道三を迎え、物々しく言上奉っていた。

 

 

「お恐れながら殿!どうか、尾張との同盟解消の件、今一度お考え下さいませ」

 

「傅役殿の支えを失うた今、うつけの信長殿には、織田家を滅ぼす事は出来ても、存続させる事など不可能!」

 

「左様なうつけ者など切り捨て、今こそ東国と手を結び、共に尾張を奪い取るべきにございます!」

 

「…はっ、その方ら。出し抜けに何を申すかと思えば」

 

道三は睥睨するように、下段の両端に居並ぶ家臣たちを見やった。

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「平手殿の自刃により殿

「平手殿の自刃により殿のお振る舞いが改まるとは…、どういう意味です?」

 

姫の問いを受け、千代山は驚いたように身体を前に突き出した。

 

「まぁ、ではお方様は、例の噂をご存じないのですか?」

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「恐れながら、家中では平手様の死は、ご乱心の末の自刃と思われておりまするが、

 

近頃 民百姓たちの間では、それとは異なる自刃の経緯が囁かれているのでございます」

 

「民たちの間で !?」

 

訃報だけならばともかく、政秀逝去の委細までもが民百姓たちの間に広まっている事実に、濃姫は目を丸くした。

 

誰が民間にそんな情報を流したのか…。

 

気になったが、先に伺うべきは噂の中身である。

 

「して、その噂というのは?」

 

「それが、実は──」

 

千代山は上座に少しにじり寄ると、声をひそめるようにして一件を語り出した。

 

 

 

 

 

 

一方 那古屋城・表御殿の裏庭では、信長が一人、黙々と弓の稽古に勤しんでいた。

 

遠くの小さな的を狙って、シュ!シュ!シュ!と、凄い速さで矢を射てゆく。

それでも正確に的の中心に当たったのは僅か二、三本ばかり。

 

いつもの調子が出ないのか、何度となく弓を持ち変えては次の矢を放つ。

 

長らくこれを繰り返していた。

 

 

するとそこへ

 

「──大変驚き入りました」

 

と、背後から濃姫が、前触れもなく歩み寄って来た。

 

「…お濃か」

 

信長は引いていた弓を下ろし、姫を横目で一瞥する。

 

「今。民百姓の間で広がっているという、平手殿の御自刃に関する噂を聞き、私、とても驚いているのですよ」

 

姫の言葉に、信長の片眉がピクリと波うった。

 

「何でも噂では、平手殿が自刃あそばされたのは『うつけな振る舞いの絶えぬ信長公を、自身の死をもってお諌めする為』だったとか?」

 

「……」

 

「そうそう、確か、平手殿が殿に宛てて『日々の行いを正すよう』『奇抜な身形は今後控えるように』等と、遺言を残されて亡くなられた──そんな噂もございましたなぁ」

 

まるで相手を揺するような口調で、濃姫は微笑みながら告げる。

 

信長は居心地の悪そうな表情をして、思わず目線を足下に逸らした。

「聞き及んでいた話とは随分と違います故、正直お濃は困惑致しておりまする。

 

平手殿の確かな自刃の経緯は不詳。遺言状にも、噂にあるような事は書かれていなかったはず。

 

はてさて、いったいどなた様が、平手殿の死をかような美談に作り替えて吹聴(ふいちょう)しているのか──。

 

殿、誰だかお心当たりはございませぬか?」

 

 

姫が笑みを保ったまま訊くと、長い長い間の後、信長はそれは深い溜め息を吐いた。

 

 

「…お濃」

 

「何でしょう」

 

「分かっておって訊いておるな?」

 

濃姫は上品な笑い声を響かせた。

 

「ご無礼をお許し下さいませ。 なれど此度は“立派な事をなされましたな”と、殿を褒めに参ったのですよ」

 

「儂をからかいに参ったの間違いではないのか?」

 

「とんでもございませぬ。菩提寺の建立の事といい、此度の噂の事といい、濃は殿のお心尽くしに感じ入りましてございます」

 

ゆっくりと頭を下げる濃姫を、信長は意外そうな表情で見つめると

 

「ほぉ…。それで?次は何じゃ。儂に惚れ直したとでも言うつもりか?」

 

と、冗談混じりに伺った。

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三津は両側の二人を目で追っ

三津は両側の二人を目で追って見たものの,二人の動きが俊敏過ぎて追いつかなかった。

鈍い音と山賊がドサドサ倒れる音だけが確認出来た。二人は打ちのめしただけ。

 

 

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入江が全滅させるなんて言うから内心どきどきしていたが惨劇を見ずに済んだ。

 

 

「今回は大した事の無い奴らだったが本当に人を殺す事に何の躊躇いもない奴もいる……。

それに……こうせねば生きて行けぬ民がいると言う事を心に留めておかねばならん。

では行こうか。」

 

 

せっかく命は助けてやったんだ。通りすがりの誰かに見つけてもらえよとその場を去った。

 

 

 

 

 

「今日は道のり長かったなぁ〜……。」

 

 

宿につくなり入江が畳に座り込んで大きく伸びをした。

 

 

「それでも想定より順調にこなせたと思うね。」

 

 

「確かに。」

 

 

二人が言ってるのは山賊の事だなぁと三津も正座してお疲れ様でしたと労いの���葉をかけた。

 

 

「松子もお疲れだったね。」

 

 

山賊にも全く取り乱さなかった事を含めて頭を撫でて褒めた��三津はこの子供扱��はいつまで続くんだと考えながら頭を差し出していた。

 

 

「それにしても二人が強過ぎです。本気出したらどうなるんです?

準一郎さんはホンマに抜かないんですね。」

 

 

桂は結局最後まで刀は抜かなかった。鞘に納めたままで相手を叩きのめしていた。

 

 

「だって木戸さん殺すつもりなかったでしょう?私は仕留める気だったんで抜きましたけどね。

本当に慰み物やなんて失礼な奴らや��それなら私が抱いとるわ。」

 

 

入江の最後の一言に桂は分かりやすく不機嫌な咳払いをした。

 

 

「お前こそ抜いたが仕留める気などなかった癖に。」

 

 

「死なずに済んでも斬られるより苦痛を味わうと思います。」

 

 

三津は斬られるより苦痛とは?どう言う事?と二人の顔を交互に見た。

 

 

「松子にこんな話を聞かせたくはないが……。この刀はかなり重い。」

 

 

桂は愛刀を手にして説明を始めた。三津は真剣な顔でうんうんと頷いて耳を傾けた。

 

 

「刃ではなく峰の方,こちらで力いっぱい打てば斬れないがかなりの衝撃を与える。」

 

 

それにもうんうんと頷いた。

 

 

「やけん私らの力でこれを思い切り振り下ろしてみ?骨砕ける。」

 

 

「砕ける……。」

 

 

「そう,元に戻らん。痛い。」

 

 

「分かったかい?まぁ切り傷も深さによるが処置はしやすいし治る見込みもある。

だが骨を砕けば長期間苦しむ事となる。折れるとは訳が違う。九一はそれを与えようとした訳だ。悪趣味だろう?」

 

 

「悪趣味?嫌だなぁ,ちゃんと加減しましたよ?多分。」

 

 

そう言った入江は満面の笑みだった。聞こえた鈍い音の正体は……。そう考えると恐ろし過ぎて三津の顔から血の気が引いた。

それに気付いた桂が優しく微笑みかけた。

 

 

「大丈夫,縛る時に確認した。砕ける程の怪我をした者はいない。多少折れてはいても致命傷にはならんだろう。」

 

 

それを聞いてほっとした。

 

 

「でも木戸さんも私と同じ悪趣味を土方に施したでしょう?」

 

 

自分だけが頭のおかしな奴みたいに扱われるのが気に入らない入江は笑みを浮かべて言い放った。

 

 

「えっ!?どう言う事!?」

 

 

流石にそれは聞き流せんと三津は桂に詰め寄った。

 

 

「稔麿から聞いてます。背中に二発も打ち込んだって。」

 

 

桂がどう説明しようか戸惑っている隙に入江はもう一言余分に付け加えておいた。

 

 

「あれは土方君からの喧嘩を買っただけだよ。」

 

 

「先に喧嘩売った癖に。」

 

 

笑顔を崩さない入江につくづく敵に回したくない奴だなと小言をこぼした。

 

 

「あのぉ……ひとまず事実を教えていただけます?」

 

 

それは一体いつの出来事なんだ。自分の知らない所でそんな事件が起きていたなんて思いもよらなかった。

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「それと小太郎の傍に居なさい。」

「それと小太郎の傍に居なさい。」

 

 

「えー。いいとこ取りする気ですか?私が前に出ると言ったのに。」

 

 

「早く先に進むには私が出た方がいいと思うが?」

 

 

桂は入江の方へ振り返り,余裕の笑みを見せた。入江もそれはそうですけどと笑う余裕がある。だから三津にも不思議と不安は無かった。香港顯赫醫學植髮中心 NU/HART - 保證有效、安全、永久、自然、美觀

 

 

「少しだけ速度を上げようか。」

 

 

「御意。松子,こっちへおいで。」

 

 

桂はさっきよりやや速度を上げた。それに合わせて自分達以外の動く人影に三津も気が付いた。だが何も知らないふりをして,入江の側について歩いた。

 

 

「おい止まれ!命が惜しけりゃ金目の物を出せ!」

 

 

行く手を阻まれて桂達は足を止めた。前方と背後に山賊達が現れた。

 

 

『おぉ出た。六人か。準一郎さんも小太郎さんも凄いな。』

 

 

三津は人数を数えて本当に六人居ると変に感心していた。二人はどの時点で気付いていたのだろうとそこに興味と関心を持っていかれた。だから今の三津に危機感などない。

 

 

「お前ら女は殺すなよ。慰み物になるからな。」

 

 

自分達の方が有利だと高を括っていた山賊のこの一言が桂の怒りを買った。

 

 

「誰を慰み物と言っている?悪いが君達こそ命が惜しくないのかい?

このままだと地獄を見る事になると思うが?」

 

 

桂の醸し出す殺気に場の空気が一気に変わった。正面からその殺気と眼力を向けられた山賊達は額に嫌な汗を滲ませてごくりと唾を飲んだ。

 

 

「あーあ,余計な事を言っちゃって……。」

 

 

入江はこりゃ命はないなぁと呑気に思った。桂なら斬らずに他の方法で済ませただろうに。御愁傷様と手まで合せた。

 

 

桂は柄に手を掛けて無言で相手に圧をかけた。入江も後方の道を塞いだ連中に備えて,こっちは刀を抜いて構えた。

 

 

『多分今まで襲った人らと同じ感覚で来はったんやろうけど……。』

 

 

襲う相手を間違えたな。三津ですらそう思った。何せ山賊達はすでに脚が震えている。その脚で少しずつ後退っている。

 

 

『ただ構えて威圧してるだけやのに。』

 

 

桂の背中しか見えてないからどんな表情をしているか分からない。でも山賊達には今までに味わった事のない恐怖なんだろうと思う。

 

 

『吉田さん達の手合わせの時はあれはあれで手加減してたんやろうし,本気出したらどうなるんやろ。』

 

 

ちょっと見てみたい。だけどそうすれば死人が出るのは確実で,それは遠慮願いたい。

 

 

「つ……つべこべ言わず有り金全部出しやがれっ!!」

 

 

雄叫びを上げながら一人が桂に刃物を振り上げて突進したが,

 

 

「遅い。」

 

 

桂がぼそりと呟いた時には山賊は地面にへばりついていた。

桂は刀は抜かず鞘ごと帯から抜き取った状態でその山賊を見下ろしていた。

それから目の前の山賊達を睨みつけた。

 

 

「命は取らない。だから退け。退かねば手か足を斬り落とす。」

 

 

桂も三津の前で血を浴びたくないし無駄に命を奪いたくない。それに水を差したのは入江だった。

 

 

「ここは全滅させた方がいいのでは?野放しにしてたら他の人間が無駄に命を落とすかもしれません。

それに,こいつらはきっと何人も殺してきたはずだ。これまでに命を奪われた者を弔う為には死をもって償わせるのが妥当でしょう?」

 

 

そう言っ���笑みを浮かべる入江が猟奇的でそれはそれで恐ろしく,対峙した山賊の脚はぷるぷる震え,震えで歯もガタガタ鳴った。

 

 

「うむ,それも一理ある。では……。」

 

 

「おっ……俺達だって生きる為にやってんだぁぁぁっ!!!」

 

 

ヤケを起こした一人が無謀にも入江に突っ込み,それを合図に他の山賊達も雄叫びを上げながら一斉に襲いかかった。が,

 

 

「……お見事です。」

 

 

山賊達は今,三津の目の前で桂と入江に手足を縛り上げられている。

 

 

「全然手応えなかったですね。」

 

 

つまんないと吐き捨てた入江に三津は苦笑いを浮かべた。本当にあっという間だった。

無闇に刃物を振り回すだけの山賊は二人にとって肩慣らしにもならなかった。

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「ある。こっちには晋作がおる

「ある。こっちには晋作がおるけぇ。あいつの奇策があれば負ける気はせん。長府に奇兵隊と先鋒隊がおるみたいに他の藩にも隊がおる。そいつらにも武器と策さえ与えれば勝てると思っちょる。」

 

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「高杉さんホンマに凄い人なんですね。」

 

 

改めて感心しているとあれでもなと入江は笑った。

 

 

「……死なないでください。」

 

 

「私は来世で一緒になるつもりはない。なるなら今世や。何があっても戻って来る。必ず。」

 

 

入江は三津の頬に手を伸ばして自信に満ちた笑みを浮かべた。三津は頬に添えられた手に自分の手を重ねて頷いた。

不思議と不安はない。入江なら必ず約束を守ってくれる。そんな気がするんだ。

 

 

「そしたら次ちゃんと戻って来たらお帰りなさいあなたって言ってくれる?」

 

 

おどけて言ってみたけど入江の心臓は馬鹿みたいに鼓動が早くなっていた。それを知らない三津は微笑みながら頷いた。約束するとそう言った。

 

 

「そしたら三津に約束守ってもらう為に生きんとな。」

 

 

「約束を守る為に私もここで生きてます。」

 

 

そんな三津の言葉に,何で自分達は夫婦じゃないんだ。入江は素直にそう思った。この距離感が心地良いようでもどかしくも感じた。でもそれ以上に踏み込む勇気はない。

今じゃない。まだ早いと自分に言い聞かせるも,また戦に行くのは確実なのも分かっている。

入江は穏やかに笑ってみせるもどこか内心焦っていた。

 

 

「三津……私も夫婦ごっこがしたい。斎藤としてたみたいに今だけでいいから旦那様って呼ばれたい。」

 

 

自制できずにそんな事を口走っていた。三津がどんな反応をするか怖かったが三津はいいですよと笑った。

 

 

「あなたと旦那様好きな方で呼びますよ?」

 

 

三津はそんな余裕さえ見せた。それが少し���しかった。

 

 

「じゃああなたがいい。私の目見て呼んで?」

 

 

すると三津は頬を赤く染めながら口を開きかけては閉じてを繰り返した。

 

 

『照れとる。』

 

 

そんな姿さえ愛らしいと思いながらじっと呼んでくれるのを待った。

 

 

「改めて呼ぼうとしたら恥ずかしいですね。」

 

 

照れ臭そうに笑いながら言われる方も恥ずかしいでしょ?あなた。と言った。

 

 

「恥ずかしいな。やめよか。」

 

 

お互い変に意識して心臓が保たないと言う結論に至ってやめた。

こんな他愛もない事で笑い合える二人の時間は本当に穏やかなものだった。そんな時間だから過ぎるのも早く感じた。

 

 

「やっぱ一日半じゃ足りんな。三津の料理も毎日食べたい。」

 

 

夕餉を食べながらそう言った。自分が奇兵隊を抜けてここへ帰るより三津を連れ戻した方が手っ取り早いとは思うが,一度決めた事は曲げない姿勢の三津だ。

もう桂と顔を合わせるのは嫌だろうしそのつもりもないはず。きっと帰って来てはくれない。

 

 

「あっという間ですね。明日休憩の時に食べるおにぎりを作りますから。」

 

 

今回はそれで我慢してくださいと申し訳なさそうにお願いした。

いつでも食べに来てなんて言える距離でも状況でもないから,三津も屯所を飛び出した事はだいぶ後悔している。

 

 

「ありがとう。今日も隣りで寝ていい?」

 

 

「いいですよ。結局客間使いませんでしたね。」

 

 

「ずっと一緒におりたいけぇ二人で住む家も小さくてええな。」

 

 

三津はその方が掃除も楽でいいと言うが入江はちょっと意味が違うと喉を鳴らした。

 

 

「小さい狭い家やといつでも三津が視界に入る。贅沢やろ?」

 

 

嬉しそうな入江に三津の顔も綻ぶ。すぐにでも実現しそうな幸せな暮らしだ。それなのにその幸せに飛びつけないのは桂に対する未練と言うより,罪悪感と言う方が近い気がする。

 

 

「私は幸せになっていいんですかね。」

 

 

つい口からこぼれた。どうしても自分の幸せを思い描けない。入江は膳を除けて三津に近寄って真っ直ぐに見つめた。

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「何度も呼んだのに無視された

「何度も呼んだのに無視された。何考えてたの。全然掃除も出来てない。」

 

 

箒を握り締めてたじろぐ三津を見てから顎に手を当ててぐるりと周囲を見渡した。掃除するような場所でもない。

 

 

「なるほど……。別に掃除しにここに来た訳じゃないのか。一人になりたかったのに悪いね見つけちゃって。

で,何考えてたの?」

 

 

屋敷の中を探したけど見つからず,庭先にもおらず,だけど箒は一本行方不明で探して��れば建物の陰でひっそりと佇む姿を見つけた。

 

 

ぼーっと遠くを見て何かを探してるような眼差し。その先に何を見てるのか。そしてピンときた。

 

 

「……そうか。もうすぐか。傷が疼くか?湯治にでも行くか?」

 

 

「傷は大丈夫!いや……その……前よりは気持ちの整理ついてるし大丈夫やねんけど……。」

 

 

三津は弱々しく笑った。

 

 

「泣きたいなら胸貸すぞ。」

 

 

「いい!着物ぐちゃぐちゃにしちゃうから!」

 

 

『号泣する気満々だな。……まぁ当然だよな。』

 

 

激しく首を横に振り続ける三津を笑った。そして三津の腕を引っ張り抱き寄せた。

 

 

「構うか。汚した分体で払ってもらうだけだ。」

 

 

こんなじゃれ合いも久しぶだなと吉田は喉を鳴らした。三津は腕の中でやめてくれと身を捩るが,これも吉田の期待した反応とは程遠い。

何と言うか覇気がない。いつもの明るさは何処へ行った。

 

 

「三津,もし眠れなくなったら玄瑞を頼れ。いい兄だろ。」

 

 

ここはそっとしておいてやるのが一番だ。無闇に踏み込める領域でもないのは分かっている。

吉田はそれだけ言い残して身を引いた。

 

 

 

 

 

 

 

その晩桂は三津を晩酌に誘った。少しでも本音が吐けるようにと,すんなり寝付けるように。

 

 

『言いたい事があれば言いなさいと言ったら素直に話すだろうか?』

 

 

目の前の三津はお猪口を握りしめて落ち着きなく体を揺らす。何か言いたげだ。

 

 

「今度……と言ってもまだいつになるか分からないが暇を取ろうと思う。何処か行きたい所はある?」

 

 

桂に向いた顔は一瞬明るくなったがすぐに影を落とした。

 

 

「あの……行きたい所はあるんですけど……。」

 

 

視線を彷徨わせて口籠る。これはこちらから言うしかないかと桂はふっと笑った。

 

 

「もしかして彼のお墓参りかな?」

 

 

桂にずばりと言い当てられた三津は目を見開いてすぐにすみませんと俯いた。

 

 

「何故謝る?行こう。今幸せだから心配しないでと伝えなければ。私も挨拶したいよ。」

 

 

紹介してもらえる?と茶目っ気たっぷりに首を傾げた。

三津は言葉が出なくてひたすら頷いた。

 

 

「お墓参りとは別に何処か……少し離れた場所で休息するのもいいな。嵯峨野辺りはどうだろ。」

 

 

地名を言っても分からないよねと笑って酒を口に含んだ。

 

 

「何処か分からへんけど小五郎さんと一緒なら……何処へでも行きます。だから……。」

 

 

桂は強引に引き寄せそれ以上言わせないように三津の顔を胸に押し付けた。

 

 

「悲しくなるような事をわざわざ言う必要なんてないだろ。」

 

 

本当に何も言わせる気がないらしい。息もできないぐらいに胸に押し付けられて口なんか開けない。

 

 

『苦しい苦しいっ!』

 

 

三津は必死に桂の背中を叩いた。

 

 

「すまない,力を入れ過ぎた。」

 

 

悪びれもなく笑う顔は子供のようだ。その顔が可愛くて愛おしい。何度見せられても顔がにやける。

 

 

「今日はゆっくり休もう。」

 

 

その言葉通りその晩は三津を胸に抱き留めて眠った。顔をすり寄せ安らかな表情に安堵して桂も眠りについた。

細い腰に纏わりつかせた手をさり気なくお尻にあてた。

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松平肥後守御預

松平肥後守御預 新選組宿"という表札が堂々と長屋門の柱に打ち付けてある。

 

「ここがワシらの屯所や。さっさ入り」

 

中に誘導されるがままに門を潜ると、中庭が広がり、あの浅葱色の羽織を着た隊士が数��居た。

 

それらからの視線を一身に受け、いたたまれなさを感じた桜花は俯く。思えば何も悪いことなどしていない筈だ。強いて言うなら、刀の鞘で浪士の頭を殴打したことだろう。

 

 

「あ、あの!私はどうなるのでしょうか」

 

腕を掴む男の顔を見上げるが、返答は一切無かった。坊主頭はここで待つように言うと、奥の部屋へ行ってしまう。

 

やがて少し驚いたような表情を浮かべながら戻ってきた。そして桜花へ同情を含んだ視線を向ける。

 

「取り調べ、副長が直々にやるそうや。やと思ったんやけどな。可哀想に」

 

「そうか。そこのあんた、何を呆けている。参るぞ」

 

 

ぐい、と腕を引かれて足が縺れそうになる。雪駄を脱ぐとひやりと冷たい廊下を歩いた。

 

「失礼します。……おい、に刀を降ろさぬ。作法も知らぬのか」

 

男の冷たい声色に、桜花は腰に帯びていた太刀を慌てて鞘ごと抜く。心臓が忙しなく音を立てて騒いだ。

 

障子が開け放たれると、そこに八畳ほどの部屋が広がる。上座には一人の男が座っていた。

 

色が白く目鼻立ちはすっきりとしており、美しいという言葉が似合う男である。だが外見には似合わず、思わず立ち竦んでしまう程の圧を感じた。

 

「斎藤、ご苦労だった。後は任せて良い」

 

「──は。部屋の前で控えております」

 

上司と部下の関係なのだろうか。桜花をここまで連れてきた、斎藤と呼ばれた男は恭しく一礼すると部屋を出ていった。

 

 

「お前が昨日、不逞浪士を捕縛した奴か」

 

男は桜花を鋭い目付きで品定めをするように見る。

 

──丈が合わない粗末な着物に、男とは思えねえほど貧相な身体。だが、から逃げたって話しだったから捕縛するように言ったが、身分のある何処ぞの若様なら洒落にならねえぞ。

 

表札にもあった通り、新撰組は会津藩の御預りという立ち位置だった。もし仮に桜花が高貴な身分であり、それを無礼に扱ったと知れれば、迷惑をかけるどころの騒ぎでは無くなる。男はそれを懸念していた。

 

 

 

「え、あの、捕縛したと言うか、そういう成り行きだったと言うか………」

 

「取り敢えず、名を聞かせてくれねえか。俺ァ、新撰組で副長をしているという者だ」

 

「その、鈴木桜花と申します」

 

名乗りを聞いた土方はぴくりと眉を動かす。まず、苗字持ちであること。苗字を持っている即ち、武家か裕福な商人の出であることが予想される。そして見目もそうだが名が女のようであること。

 

──まさか、女って訳じゃあねえよな。刀を差すだけなら誰でも出来そうなもんだが、男をすってのはそう出来るモンじゃねえ。考えすぎか。

 

土方は自己完結すると、視線を天井へ向けて首を捻る。「お前さんは京の者……では無えよな。言葉が全然ェ。どちらかと言うと、の方か。生まれは何処だ」

 

「と、……江戸です」

 

思わず東京、と言いそうになったが何とか言い直す。

 

「ほう。俺らも江戸から来たんだ。どこの土地だ?俺は多摩の石田村ってところだよ」

 

男士脫髮 その問いかけに、桜花は言葉を詰まらせた。この時代の���名など分かる訳が���い。適当に言ったところでバレるだろう。まさか目の前の男が江戸の出だったとは、運が悪いとしか思えなかった。

 

 

「……その、覚えて……ません」

 

「覚えていないだぁ?取り敢えず、手形出して

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江戸から来たなら

江戸から来たなら往来手形くれぇ持っているだろう」

 

 旅人であれば必ず携帯しているものである。脫髮先兆 それを見れば、身分や出身も把握出来た。桂もそれを求めてきたし、高杉も重視していたため、どれだけ重要な物であるかは何となく分かる。

 

 だが、無いものは無いのだ。

 

 

「おい、聞こえてんのか。身ぐるみ剥がされたくなけりゃ早く出しちゃあくれねえか」

 

 段々と土方の声色に怒気が含まれてくるのをひしひしと感じる。

 

 どうしよう、と桜花は膝に置いた拳を握り、目を瞑った。その時、池田屋を出る前に聞いた高杉の言葉が脳裏に浮かぶ。

 

『分かったか?下手なことも言うたらいけん。いっそボロが出るくらいなら、何も覚えちょらんで通せ』

 

 桜花は顔を上げた。やっと出す気になったかと土方は眉を顰める。

 

「何も、分からないんです。山に、倒れていたところを、親切な人に助けて貰って、」

 

 緊張で口の中が乾いた。途切れ途切れになりながらも、桜花は身の上を必死に訴える。

 

「はあ?」

 

 

 土方が訝しげな声を出したその時、スッと背後の障子が開いた。浅黒く、しい顔つきをしたガタイの良い男が入ってくる。そして土方の横へどっかりと腰を降ろした。

 

 更に怖そうな人が来たと、桜花は視線を畳へ移す。

 

「歳、随分と手こずっているじゃないか。」

 

「近藤さん。だってよ、此奴が何も分からねえとか、覚えていねえとか抜かしやがるから」

 

 近藤と呼ばれた男は、ふむと声を漏らした。

 

「本当なんです、覚えていないんです。私には……帰る場所も頼る宛も何も無くて。島原というところに行けば、働かせてくれると教えてもらったから、行こうとしていたんです」

 

 じわりと目に涙の膜が張る。ただでさえ、明日さえ知れずに不安で心が押し潰されそうなのに、何故立て続けにこうも不幸に見舞われるのだと思った。

 

 だが、涙は見せるなと高杉に言われたため、何とか零れぬように拳を握って堪える。

 

 

「坊や、嘘を吐けば無事には帰れぬよ。もしや知らないかも知れねえが、最近は物騒でね。我々も手を尽くして治安を守っているが、それを良く思わないが妨害しようとして来るんだ」

 

 近藤は子どもへ言い聞かせるように問いかけた。それは存外優しい声色である。

 

「嘘じゃありません……」

 

「そうか。部屋に入る前に聞こえてきたが、山で倒��ていたと云うのは?詳しく聞かせちゃあくれねえか」

 

 その声に、桜花は高杉や桂のことを伏せたものを掻い摘んで話した。

山に登ったのは夏だったが、冬になっていたこと。老婆に拾われ、天狗攫いか神隠しにあったのではないかと言われたこと。親切に"道案内"をしてもらった人と茶屋にいたら、騒ぎに巻き込まれたこと。

 

 

「ふむ。それが本当だとしたら大変だな。若いのに苦労をしたものだよ」

 

 頭上から降ってきた同情するような声に、桜花は思わず顔を上げた。

 

 近藤は腕を組み、太い眉尻を八の字に下げている。そこへ少し呆れたような表情をした土方が近藤を見やった。

 

「おい、何あっさりと同情してんだよ。それが真だという保証は無ぇだろうが。お前さんは優しすぎるんだ」

 

「だ、だが……。嘘だという保証も無いだろう。このようなも済んでいない子どもが、旅の途中で天狗攫いや追い剥ぎにあったと云うのなら、心を痛めるのは当然じゃないか」

 

 子ども、という言葉に���花は瞬きをする。言われてみれば、男として見るならば体格的に幼く見えてしまうのかも知れない。「追い剥ぎ��て……、こんな立派な差料を盗らない阿呆な賊がいるか?それに覚えていねえって訳が分からねえだろう」

 

 土方は桜花の手元にある太刀を指さした。

 

「こ、これは……。山を降りる時に私を助けてくれた方から貸して頂いたのです!亡くなった息子さんに似ているとかで……」

 

 その言葉に、土方は桜花を改めて見る。すると、何かを思い出すように目を細めて、視線を天井へ向けた。

 

「待て、そう言われて見ると俺も見たことがある気がする。ガキ��頃の話しだったか……。その目だ、琥珀色の目。まあ、似た奴なんてよく居るか」

 

『その目も同じじゃ。じゃけど隠し子……にしては、大きいしのう』

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